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水戸地方裁判所 昭和34年(わ)157号 判決 1959年11月09日

被告人 武弓武彦

決  定

(被告人氏名略)

右の者に対する公職選挙法違反被告事件につき、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件公訴を棄却する。

理由

本件記録編綴の郵便送達報告書(但し、第一綴の分)並びに本件で取調べた証人武弓絹及び同塩原栄次に対する各尋問調書を綜合すれば、被告人に対する本件起訴状の謄本は昭和三十四年七月一日常陸太田市木崎一町千九百九十六番地に送達されて被告人の妻武弓絹においてこれを受領しておることが認められるが、同居者が本人に代つて送達を受けることができるためには送達をする場所においてこれを受くべき者に出会わないことを前提とするものであるから本件送達を有効なものとするには右場所が被告人の住所、居所、営業所又は事務所であることを必要とするところ前記証人武弓絹に対する各尋問調書(二通)によれば被告人は従前前記一町千九百九十六番地に右絹と共に居住していたが、昭和三十四年六月二日同女に無断で同所を離れ爾来今日にいたるまで音信不通、その所在が不明の状態にあり右送達を受けた当時被告人において同所とは居住その他右所掲の関係のないことを認めることができるから本件起訴状の謄本は結局適法に送達されなかつたものと認めるのほかない。

果して然らば、本件は公訴の提起があつた日である昭和三十四年六月二十九日から二箇月以内に被告人に対し起訴状の謄本が送達されなかつたことが本件記録上明らかで公訴の提起がさかのぼつてその効力を失つた場合に該当するから刑事訴訟法第三百三十九条第一項第一号に則り本件公訴はこれを棄却すべきものである。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 浅野豊秀)

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